會津正之
昭和12年12月生。会社員。著書:「秘の鎮魂歌――万葉集は何故編まれたか」伊村正之名著(八重岳書房)



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直言曲成


直言曲成#6(01/11/06)

 「野蛮の勃興こそ歴史の跳躍台である」――司馬遼太郎さんの小説『韃靼風雲録』(中央文庫)下巻の〔ブックカバー〕に書かれていた言葉だが――頷ける言葉である。
 日本史を振り返ると、鎌倉武士の登場、戦国時代の幕を開けた北条早雲、近世を拓いた織田信長など、数え切れない程の挑戦者を観ることができるが、世界史との関連では、結局「明治日本」に落ち着く。この勃興によって、まさに世界を覆いつくさんとした、「西欧による植民地化」の動きは反転し、局面は「先発帝国主義国家」と「後発帝国主義国家」との闘争の世紀に突入した。

 古代に目を転じると、典型は「ローマ帝国」を滅ぼしたゲルマン民族の侵攻であろうか。
 それとも、(野蛮ではないが、新しい精神の息吹として)ローマを改宗させたキリスト教であろうか。ローマは政治的にユダヤを亡ぼしたが、〔反作用〕としてキリスト教(ここでは一括りにする)によって宗教的に占領されたのであった。いま――、

 私たちは、「人道」と「聖戦」という名の大義名分同志の、あるいは〔先進的な資本主義社会〕と〔古代からの遊牧と信仰を基盤とするアラブイスラム政治・文化圏〕との、いやこれでは問題が単純にされすぎているであろう、むしろ〔超大国のすべてを支配してやまぬ国家意志〕と古い時代から連綿と存続してきた〔暗殺教団〕の伝統に結びついた〔弱者の怨念〕との、斗いを目の当たりにしている。
 いずれの側も、されたことは覚えていても、したことは覚えていない。いずれの大義名分も、深く突き詰めれば、同根の花木であることが分かっていない。

 事態が泥沼化し、東端の火薬庫に連動して、西端の火薬庫も爆発する頃には、ウイルスたちは制御できる範囲を越えて猖獗し、私たちの社会を人間不信と憎悪と恐怖が、そして異様に壊れた人間たちが闊歩するだろう。こうなった時は、次ぎに待っているのは、北欧神話の謂う〔巨人たち〕である。大地は裂け、海は轟く。
 それは、私たちがイデオロギーを振り捨て、人間本来の在りように立ち戻り、お互いに助け合おうと感じ、決意し、行動に移すまで続くだろう。
 
 未来は何時も予兆を送り込んでくる。神話は一方では予型でもある。
 私たちはつい先頃、バベルの塔の崩壊を体験した。世界を覆っている漠たる不安は、人類の意識の深層に、何度も何度も頂点に達しては更なる飛躍が出来ず、奈落の底に落ち、大地から一掃された記憶が眠っているからではないのか。

 そのなかで日本人はどう在り、どう行動すべきだろうか。それにしても思うのは、私たちの脳と脊髄に〔戦後民主主義〕というプリオンが繁殖し、積み重ねられた歴史と恵まれた自然が語りかける〔秘やかな声〕が聞こえない程にまでなっていることである。
 牛の脊髄を電気掃除機の要領で一気に抜き取ることを発案した人がいるが、こんなふうには、マア、出来そうもないか。


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