會津正之
昭和12年12月生。会社員。著書:「秘の鎮魂歌――万葉集は何故編まれたか」伊村正之名著(八重岳書房)



Copyright (c)2001-2002
プルナマ国際ネットワーク 
All rights reserved.






直言曲成


直言曲成#8(02/02/07)

 新潟県の女性監禁事件の犯人への刑の軽さに、唖然とした人は多いと思う。
 彼女が15年経過以降から生涯感じ続けるであろう恐怖を、司法関係者はどう償うつもりなのか。
 「刑」というものを定めることができる法曹界の人々は、「恐怖」という牢獄に再度彼女を幽閉する罪を、今度は自分達自身で負ってもらいたい。
 何度でも言う必要があると思うが、「刑」はその(霊的な意味での)「罪」にふさわしく定められていなければならず、「刑を定める基準乃至思想」によって、体系的に「刑」がその「罪」より軽く定められている場合は、必然的に社会は劣化する。

 フランスに「推定無罪法」という法律がある。
 産経新聞(2月3日)の記事によれば、この法律は、2000年6月に成立し、2001年1月に発効したものだが、その特徴は、
@ 容疑者の拘束条件が緩やかなうえ、
A 取り調べを行う予審判事の上に「釈放か拘束」の最終決定を下す判事が置かれている。
とのことである。
 そのため、「法に抵触することを極端に怖れる判事」(法務省筋)が容疑者を簡単に釈放
するケースが増えていた。
 この法律の施行後、と記事は続ける、
 イ・同法発効後の1月から6月までの収監率は、前年度比約26%減。
 ロ・4人を殺害した容疑者が釈放後に警官2人を殺害する事件が引き金となって、昨年末には憲兵隊や警官が、待遇改善とともに、同法の不備を訴えてストを決行するという事態が発生した。
 ハ・1月28日に発表された2001年の年間犯罪総数は400万件を越え、前年度比7.7%増。掏摸などの公道での犯罪検挙率は8.1%と低い。

 結局この法律について、野党である中道・保守党は廃案または徹底的改定を要求、一方与党である社会党や緑の党は部分的改定を主張、部分的改定で採択される予定、ということである。

 この「部分的改定」で事態がどうなるかは「これからの見物」である。
 一般的に私たちの社会は、判決までの手続きについては、慎重かつ精妙に作り上げている。が、「犯罪」あるいは「悪」を、「人間が構成している社会」あるいは「人間という存在」のなかで、どう捉え、どう位置づけるか、の視点が欠けている。
 ある意味では、このテーマは、意外かも知れないが、法曹界の人々にとって、専門外の分野である。それ故、「判決」に当たって「犯罪」をどう測るか、が未成熟のまま残されていても不思議ではない。
 このことは、近代という時代が神を追放した時代であると言われていることと軌を一にしている。精神の巨人たる先達の内的格闘の結果を、あるいは長い時間を懸けて出来上がってきた伝統のもつ抑制力を、私たちは観ることも、評価することも、活用することも出来ないところに居る。
 「罪も憎まず、人も憎まない」子供じみた性善説の信奉者は、理想社会を目指して、結果として社会の劣化を招来しているのである。

 人間は弱い。弱い存在である。
 仮に「法」が、いま述べたような役割をもって、十分に機能しているとしても、それに抵触しない部分で、私たちは、多くの「罪」、多くの「悪」に、自分自身の問題として直面し、戦わねばならない。
 大いなる霊的覚醒がその人に訪れるまでは、人は、仏教でいう「二河白道」を辿り、「無明長夜」をひたすらに歩み続ける。
 願わくば「法」が、本来の役割を外れて、社会という「人生の学校」を「魑魅魍魎の跋扈する密林」に化す手段として利用されることのないように。


Back | Next





専門書が探せる、買える、インターネット書店、専門書の杜

TOP現場ルポエッセイ,コラムLINKSMAIL