建部ロザック
昭和3年6月生。株式会社プルナマインターナショナル代表取締役。訳書等、「スブド」(メルクマール社)、「未来からの贈り物」(八重岳書房)、ほか



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気ままな読書散歩道


「心臓の暗号」

 心臓移植でドナーの記憶も移植される?

 臓器移植が日本でもようやく本格化しはじめた。臓器移植法の審議は、脳死は人間の死であるかという疑問とともに始まったが、すっきりした決着がないまま、法律が制定されて走り出した。

 「人間のいのち」とは何かという重大な問いには、実はまだ誰もはっきり答えられない。だから臓器移植が社会的に認められても、「生とは何か、死とは何か」を含め、多くの根本的な問題が21世紀まで持ち越しになったことは否定できない。
  
 「心臓の暗号」は、米国の精神神経免疫学者が書いた本だが、脳のコントロールを失った各器官は、機械部品と同じで、取り替え可能なパーツにすぎないという現代科学の「唯脳論」に疑問を投げかける内容になっている。

 著者のポール・ピアソールは、自らもガンで骨髄移植を受けており、臓器移植に反対してはいない。しかしその際の自分の体験と、同僚の科学者たちとの「エネルギー心臓学」の共同研究を通して、思考と知性は脳の専売品ではなく、心臓にも知性があり心臓も考えると主張する。また細胞は記憶を持っていると主張する。しかし脳の知性と心臓の知性は同じではない。

 脳は身体の保全のための反応システムであり、不測の事態に備えて身体との間で絶え間なくおしゃべりを続け、もともと静かに考えたり感じたりするシステムではない、と著者は言う。

 それに対して感受性の中枢である心臓は、著者がLエネルギーと呼ぶ心臓からの微細な情報エネルギーを全細胞に発信し、全細胞はそれを細胞記憶として保存する。それは脳とは異なる記憶システムである。

 心臓エネルギーの情報は体内だけではなく、皮膚の外に出て他の人達や宇宙にまで達する。心臓からの暗号は、他人への共感、いたわり、虫の知らせ、魂のささやき、などさまざまな形をとる。脳の暴力で弱まっていた細胞の記憶をよみがえらせ、心臓の暗号の波長に合わせれば免疫力も高まり癒しも起こる。

 この意味で心臓は人間という身体システムの核であり、単に血液を送り出すだけのポンプではない。種類や周波数の異なるさまざまなエネルギーを生成し、発信し、受けとることによって、身体をひとつにまとめ、脳と強調しながら、脳以上に重要な役割をになって生命エネルギーのバランスをとっている。宇宙との比較で言えば、心臓は人間という生物物理学的な「太陽系」の太陽であり、脳はそのまわりを回っている重要な惑星である地球にすぎない。

 心臓のLエネルギーは、もちろんまだ科学的に検証できない仮説であり、著者はさまざまな角度からの証言を集めてその存在と機能を説明しようとしているが、話が多岐にわたりすぎて充分に整理されていない嫌いがあり、今ひとつ分かりにくい。東洋医学やバイブレーション医学などの「気」その他の微細エネルギーや、人間の魂やスピリチュアリティの働きを、すべて心臓の機能として解釈しようとしたという印象を受ける。

 しかし著者の心臓エネルギー説のよりどころの1つは、心臓移植を受けた人(レシピエント)の証言である。

 「移植された心臓は、細胞記憶の情報エネルギーもいっしょに連れていく」と著者は言う。そして多くのレシピエントが、移植によってドナーの記憶や好みや性格の1部を受け継ぐ経験をしていると述べる。

 まさか、というようなセンセーショナルな発言だが、確かにありえないと断言もできない。著者は140のインタービュー録音をもとに、患者だけではなくその親族からも裏付けがとれた5例を紹介している。もしこれが今後さらに裏付けられて無視できなくなれば、脳死や臓器移植を新しい角度から見直すことも必要になるだろう。(「心臓の暗号」角川書店)


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