●第6回・「芸術職人」を育成します・ものつくりの視点を伝える──日本装飾美術学校

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「芸術職人」を育成します・ものつくりの視点を伝える──日本装飾美術学校  | Page1 -Page2

“技術”ではなく、“意匠”を

──『ものつくり大学』については、どうお考えですか。

「パンフレットを読んだ限りでしか知らないのですが、決定的に違うのは、ものつくり大学は“技術”を教えるところで、うちは“美術”だというところです。生活空間に必要なのは、美的な要素だという考え方。たとえば、尾形光琳だとかは、上層階級の家にあった屏風ですから、生活空間というよりは、もう少しシンボリックなものだったとは思いますが、完全に建築と結びついた形です。そして、それがいまでも残っているのは、“美しかったから”ですよね」

 尾形光琳と言えば屏風絵。燕子花や紅梅。そして椿。

「また、フランク・ロイド・ライトの明日館(東京・池袋)が最近修復されたのですが、あれも技術的にマズかった部分を補修した形なんです。ライトの建築の中で、僕はあれがいちばん素晴らしいと思います。ほんとうにデザインがいい。ところが、当時日本の大工がツーバイフォーのやり方に未熟だったこともあり、柱が地面に埋まっていたりして、日本の風土に合わない、など技術的にはおかしなことがいっぱいなんです。見た目と中が違うというか、日本の古民家などと比べたら非常に造りが悪い。にもかかわらず、残しておこう、修復しようという情熱に支えられているんです」

 私もよく思うのですが、“技術のための技術”はあんまり価値がないというか、見ていてあまり感心するものではありません。テクニック満々のホームページを作っても、内容が面白くなければ凡作になるように。逆に言えば、面白いサイトを作る人のもとには技術者がフォローしに来てくれますよね? あの感じって、全ジャンルの創造性に通じると思う。

「技術的には優れていなくても、“いいデザイン”であることが大事だと考えていまして。そのいいデザインを作り出すために、工房同士が連結し、技術の交流をしていく。デザインが頭に浮かんだときに、それをフォローしていくのが技術だという考え方なんです」

日本美術が世界に発信したものを

──“職人”ではなく、“作家”を育てる方向ですね。

「ううん、あのね・・・作家の中には、一部、“芸術作品”を作ってしまう人がいるんですよ。つまり、どこにも置けないものを(笑)」

──ああ、はい。つまり、芸術作ですね(笑)。

「本来の意味の“作家”、“芸術家”というのは、社会に対してメッセージを持っていますよね。そういう意味で、現代の作家というのは、皮肉っぽいものを作ったりとか、人目を惹くものを作ったりとかしています。でも、ここでいうのはそうでなく、あくまでも、生活空間を豊かにするためのものつくり職人なんです」

生活空間を豊かにするためのデザイン。それをつくるにはどういった勉強を・・・?

「ものを見る目とか、形を理解するとか。自然のもの(植物など)をデッサンして、どういうふうな構造になっていて、どういった比例で出来ているのか理解するという勉強をしています。その中にデザインのヒントはたくさんありますから」

なるほど。工房を見せてもらったら、上の写真のようなものが壁にかけてありました。植物の接写写真や、昆虫の写真です。生徒さんの創った作品も、下の写真のように、自然物をヒントにしたフォルムが多いです。(下の写真はクリックすると拡大画像が見られます)

「たとえば、アールヌーボーなどは、それ以前のヨーロッパの芸術では取り上げられなかったモチーフを入れています。日本の美術の影響を非常に受けています」

 花や蝶をありのままの姿に描くというのはヨーロッパにない表現でした。アールヌーボーはフランスのガラス/陶芸/家具作家のエミール・ガレの台頭と共に始まり、エミール・ガレが死んだら退潮した、というくらい短いムーブメントなのですが、世界的影響力は今でもすごいです。そのエミール・ガレは日本の画家との出会いで大きく才能を開花させました。
 
 日本美術に影響を受けた、というより、ガレの場合はもともと自分の中にあった自然観が異国の感性にマッチした、という感じです。西洋の論理性を持たず、生は死につながり、死はまた生につながる、といったような、再生観・輪廻観を持っていたガレは、「フランスで日本人として生まれた」とまで言われていました。そして彼の芸術性は、新しいガラスの着色法、組み合わせなど、多くの「新しい技法」を生み出しています。

 個人的にガレを愛しているのでちょこっとウンチクたれてしまいましたが、「芸術」とはガレのように自分の中にあるものを探し出して掘り起こす作業なのです。生活空間の中にあって違和感のない、むしろそれがあることによって心が安らいだり、華やいだりする。そんな「もの」を創る学校。琴線に触れる人はきっととても多いと思いました。装飾美術や建築を志す人はぜひ、この学校の存在を心に留めてみてください!


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